サポニンとはどのような効能によって健康維持に役立つのか科学的に検証してみました。
少し難しい専門用語がでてきますが難しいところは読み飛ばしてわかる部分だけ御覧ください。サポニンというものはどういうものか少しでもご理解いただけると幸いです。
高麗人参の有効成分
高麗人参の主な有効成分は、サポニン(saponin)またはジンセノサイド(ginsenosides=人参サポニン)と呼ばれる複合炭水化物(アルコールまたはフェノールと糖複合体)として知られています。
サポニンとジンセノサイドはサポニン(saponin)とは? と ジンセノサイド(人参サポニン)とは?でも説明してあります。
一般的に、配糖体系は、溶血作用とロテノン(rotenone)作用を引き起こす非常に高い分極化合物を形成します。
サポニンは、血中コレステロールと結合して複合体を形成します。
ただ、ジンセノサイド(人参サポニン)は溶血作用がほとんどありません。
ジンセノサイド(人参サポニン)の他のサポニンとの違いと特徴は以下です。
- ジンセノサイド(人参サポニン)はほとんどトリテルペノイド(triterpenoid)(※注1)系のダンマラン(dammarane)系サポニンとして人参属の植物のみ存在する特有のサポニンです。
- 他の植物から発見されているサポニンは溶血作用がありますが、ジンセノサイド(人参サポニン)は毒性がほとんどない中性配糖体(neutral glycoside)です。
- ジンセノサイド(人参サポニン)の効能は、他の植物のサポニンと著しく異なっている。
- ジンセノサイド(人参サポニン)だけの分子量がある。
ジンセノサイド-Rg1(ginsenoside-Rg1、C42H72O14 2H2O)=837
ジンセノサイド-Rb1(ginsenoside-Rb1、C54H92O23 3H2O)=1163
ジンセノサイド-Rf(ginsenoside-Rf、C42H72O14 2H2O)=837
以上の4点になります。
人参サポニンの配糖体(glycoside)を酸で加水分解すると、
パナキサジオール(panaxadiol)
パナキサトリオール(panaxatriol)
β-シストステロール(β-sistosterol)
オレアノール酸(oleanolic acid)
パナキサジオール(panaxadiol)、パナキサトリオール(panaxatriol)
サポニンの種類
高麗人参学会で発刊した最新の高麗人参の研究第1集(2007年)によると、
現代の分析技術のおかげで66種のジンセノサイド(人参サポニン)が明らかになり、
高麗人参(白参、紅参)、米国参、三七参のジンセノサイドの種類と含有量は、表1-6の通りです。
ジンセノサイド(人参サポニン)の成分の分類
以下の3つに分けられます。
- プロトパナキサジオール(Protopanaxadiol)=(
PPD) - プロトパナキサトリオール(Protopanaxatriol)=(PPT)
- Oleanane系 サポニン
高麗人参, 三七人参, 米国人参の PPD(Protopanaxadiol), PPT(Protopanaxatriol), Oleanane系,ジンセノサイド(人参サポニン)種類
ジンセノサイド | 高麗人参(Panax ginseng) | 三七人参(Panax notoginseng) | 米国人参(Panax quinquefolius) |
---|---|---|---|
PPD系 | 22 | 14 | 13 |
PPT系 | 14 | 15 | 5 |
Oleanane系 | 2 | – | 1 |
合計 | 38 | 29 | 19 |
38種のジンセノサイド(人参サポニン)化学構造が高麗人参(Panax ginseng CA Meyer、紅参31種、百三25種)で発見されており、
米国人参(Panax quinquefolius L.)は、19種のジンセノサイドが、
三七人参(Panax notoginseng Burkill)は、29種のジンセノサイドが発見されました。
(ジンセノサイドの種類は研究結果や時代において変化する場合があります。今回の研究結果では高麗人参 紅参は31種類のジンセノサイドが発見されていますが、通常は32種類の場合が多いです。)
高麗人参の総サポニン化合物の数(38種ジンセノサイド)は、米国人参(19種ジンセノサイド)と三七人参(29種ジンセノサイド)よりもはるかに多いです。
このように高麗人参は他の人参に比べてサポニンの種類が多いために効能も高いことが科学的にわかります。
ジンセノサイドの成分
- ジンセノサイド-Ra1、-Ra2、-Ra3、
- マロニルジンセノサイド-Rb1、-Rb2、-Rc、-Rd、Rf、Rf2、Rg3、Rg5、Rg6、20(R)-G-Rg2、20(R)-G-Rh1、Rh2、Rh4、K-R1、K-R2、20(E)-G-F4、Rs1、Rs2、Rs3
- ポリアセチレンジンセノサイド-Ro
ポリアセチレンジンセノサイド-Roは米国人参にはなく、高麗人参のみ唯一含まれている成分です。
それぞれのジンセノサイドが異なる薬理作用をするということを考慮すれば高麗人参が他の人参よりも優れたといっても過言ではないようです。
高麗人参のジンセノサイドRb1(Protopanaxadiol)とジンセノサイドRg1(Protopanaxatriol)の割合は、米国人参または三七人参の割合とは異なっております。
米国参にはジンセノサイドRg1の相対量が非常に小さいのに対し、高麗人参ではほぼ同じ量です。
世界市場で高麗人参の高い評価は、外見や製造技術のせいだけではないと言う事です。
高麗人参の優れた部分は、ProtopanaxadiolとProtopanaxatriolの割合と関連があると言えます。
サポニンの副作用
人参サポニンは本当に多くの役割がありますが、食べ方などの違いで副作用が起きることはないかと不安もあると思います。
サポニンの副作用にはどんな事が起きるのか?
副作用が起きないような飲み方はあるのか?
みてみましょう。
一般的にサポニンを多量に摂取すると、血球を溶かす溶血作用(ようけつさよう)(※注2)などの毒性があります。
大豆と小豆は高麗人参と同じようにサポニンが含まれておりますが溶血毒性成分も含まれています。
この溶血毒性分は加熱時に破壊されて毒性を失うので、煮た後に摂取すると問題もありません。
唯一高麗人参のみが毒性がない有用なサポニンのみを持っており、高麗人参を生で摂取しても大丈夫です。
ジンセノサイド(人参サポニン)は溶血作用などの毒性がないので、多量・長時間摂取しても副作用が起きないのが特徴です。
ジンセノサイド(人参サポニン)が、副作用が起きないのでさまざまな効能があることは一般的な動植物サポニンの化学構造とは別のトリテルペノイド(Triterpenoid)のダンマラン(Dammarane)(※注1)構造を持つ配糖体であるためです。
したがって、人参サポニンを他の植物系サポニン成分と区別するために人参と配糖体の合成語である「ジンセノサイド」と命名しました。
高麗人参は化学的に作られた医学用の植物ではありません。
食品の高麗人参は、食べすぎるとお腹が痛くなる事や新鮮ではない物を食べるとお腹を壊すようになります。
高麗人参も大量に服用したり、長期間服用をする場合は漢方医やお医者さんと相談して処方される事をお勧めしたいと思います。
注2 溶血作用(ようけつさよう)
赤血球を溶解させる作用。各種生物が生産する毒素の中には、この機能を持つものがある。つまり、赤血球の膜を崩壊させて、内部のヘモグロビンが血漿中に放出されるので、酸素運搬体がなくなってしまうし、最悪の場合には死亡する。予防の方法は過剰摂取を禁止する。
高麗人参と一緒に食べて良いもの悪いもの!食べ合わせ
(良いもの)
高麗人参+蜂蜜: 低カロリーの高麗人参を蜂蜜と一緒に摂取するとカロリーを補うことができます。蜂蜜が消化吸収を助けてくれます。
高麗人参+ナツメ: ナツメは体を温めて、神経を安定させる作用があるため、高麗人参ともよく合います。
高麗人参+黄耆(オウギ): 肺の機能を良くし、汗を調整してくます。
高麗人参+長芋: 滋養強壮効能があり、気管支を丈夫にしてくれる。
高麗人参+熟地黄(ジュクジオウ): 血圧調節を助けるために体の津液(しんえき=体からしみ出でる体液)を補充してくれます。
高麗人参+麦門冬+五味子: 夏に飲むことをお勧めします。肺の機能を助け汗で落ちた栄養成分を補充してくれます。
高麗人参+鶏: 鶏の独特の臭いを中和させ、気力を補強してくれます。
(悪い食べもの)
高麗人参+牛乳: 人参をミキサーでミックスして牛乳に混ぜて飲むと苦味が減って飲みやすいです。しかし牛乳は動物性脂肪とタンパク質の含有量が高く消化吸収がうまくできないので消化機能が弱い人にはお勧めしません。
高麗人参はこんな方にお勧め
- 疲れがとれない方
- コレステロールの改善が必要な方
- 痴呆(ちほう)予防が気になる方
- 肥満を改善したい方
- 性機能を改善したい方
最後に
地球に生存する植物の中でサポニンを含有した植物は現在まで明らかにされた種類だけでも200種以上だと聞きました。
サポニンの含有量がありこれを数値で表現することは出来ますが、サポニンが人体に及ぼす影響をまだ明確に明らかにした事実はありません。
そのため世界の各国で色々な研究や実験が行われています。
漢方医学から見て現代の科学に基づき分析されたサポニンを含む薬剤の中には、補薬もあり、反対の機能を持つ場合もあります。
また、サポニンの含有量がごくわずかな黄耆(オウギ)も人参とほぼ同じ効果があり、一緒に補陽薬に使用されております。
したがって必ずサポニン含有量と効能が比例するわけではなく、効能の基準にはなりませんが、食品中の唯一に毒性を持たない高麗人参の特徴は優れていると思います。
注1 リテルペノイド(triterpenoid)系のダンマラン(dammarane)系サポニン
サポニンの化学構造は、糖部分sugar(glycoside)と非糖部分non-sugar(aglycoside)で構成されている配糖体である。非糖部分をサポゲニン(sapogenin)と呼ぶ。
サポニンは、非糖部分の骨格構造に応じて大きくトリテルペノイド(triterpenoid)系サポニン、ステロイド(steroid)系サポニンの2つに分類する。
人参サポニンはほとんどトリテルペノイド系のダンマラン(dammarane)系サポニンとして人参(panax)の中の植物にのみ存在する特有のサポニンである。人参は他のサポニン含有植物と差別される薬理効果を持つのはこのためである。
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